最近、不倫騒動が世間を騒がせることが増えています。
週刊誌等の報道の在り方には様々な意見があるところかと思いますが、不倫問題は他人事ではありません。
今回は、万が一、不倫問題に巻き込まれてしまった場合に、加害者に対してどうやって慰謝料を請求していくのかについて取り上げます。
1 法的請求の根拠:不法行為(民法709条)
配偶者に不倫をされてしまった場合、被害者は、加害者である「不貞をした自分の配偶者」と、「その不貞相手」に対して、民法709条1項の不法行為に該当するとして、慰謝料請求をしていくことができます。
民法709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
それでは、不貞慰謝料を請求する側は、何を主張・立証していく必要があるのでしょうか。問題となりがちなのは、次の2点です。
⑴ 不貞行為の存在
⑵ 相手方の故意・過失
まず、不貞行為の存在についてみていきましょう。
2 不貞行為とは?
不貞慰謝料請求において問題となる「不貞行為」は、以下の3つの場合に認められています。
①性交又は性交類似行為
②同居・同棲
③その他、結婚生活を破綻させる可能性がある異性との交際
不貞による慰謝料を請求する側は、これらの①~③のどれかが事実として存在すると主張・立証する必要があります。
もっとも、昨今では不貞配偶者と不貞相手間のSNSのやり取り(LineやFacebook)が残っていることも多いですので、まずは客観的な記録を集めることになります。そのような記録を発見した場合、不貞配偶者の携帯電話の画面(不貞相手とのやり取りの文章)を写真として撮っておくとよいでしょう。携帯内の電子データを抜き出すよりも簡単に証拠化できます。また、ドライブレコーダーの記録もよく証拠として出てくるところです。
ここで、探偵を雇うなどして多額の調査費用をかけてしまう方もいらっしゃいますが、一定程度証拠が揃っているならば、途中で一度弁護士に相談して、追加調査が必要かどうかを聞いてみてください。
また、不貞配偶者が不貞行為を認めている場合には、不貞配偶者に念書を書かせておくことも対応としては考えられるところです。
次に、相手方の故意・過失についてみていきましょう。
3 相手方の故意・過失とは?
不貞行為においては、相手方に「自分は結婚している相手と不貞行為をする」という認識があれば、故意が認められます。
通常、不貞関係は、職場や友人間で発生することが多く、当然結婚していると知っていることも多いですし、SNSのやり取り等から立証できることもあります。
4 損害賠償額の目安
⑴ 裁判で認められる損害賠償額は、事案によって異なるものです。
先例を参考にするならば、300万円が一つの目安といえるでしょう。
⑵ 注意点:共同不法行為であること(不真正連帯債務)
不貞行為においては、通常、加害者が2名、被害者が1名です。
(ダブル不倫の場合は、加害者2名、被害者2名となります。)
このため、不貞慰謝料は、加害者の双方に支払い義務があります。
仮に慰謝料が300万円ならば、300万円を支払う義務が加害者に生じますが、
総額300万円を超えることはありません(被害者は加害者のどちらにも300万円を請求できます。)。
ただ、加害者の片方が支払った場合、加害者同士の内部関係上、支払っていない加害者の一方に対して
求償請求が認められることがあります。
例えば、
被害者X(女性) = 不貞配偶者A(男性) ⇔ 不貞相手Y(女性)
婚姻関係 不貞関係
という事例を考えてみます。
被害者X(女性)としては、自分の夫である男性Aと不貞をした相手Y(女性)に対して、
慰謝料請求を行います。
そして、不貞相手Y(女性)から100万円の慰謝料の支払いを受けたとしましょう。
その後、不貞相手Y(女性)としては、不貞配偶者A(男性)に対して、
「あなたも加害者なのだから、私が払った分の一定割合は負担してください」と主張し、
Yが支払った100万円の一部を請求できる可能性があるのです。
一般的には、不貞配偶者は、5割以上の内部負担割合となることが多いといえるでしょう。
つまり、男性Aは不貞相手Yに対して、50万円以上を支払う必要が生じる可能性があるのです。
慰謝料の交渉や和解をする際においては、これらの事情も全て考慮する必要があります。
次回は、不貞慰謝料請求における消滅時効の問題を取り上げます。