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酒気帯び運転の故意について

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 飲酒運転は、その危険性から絶対にやってはならないものです。

 

 ただ、「酒気帯び運転」として犯罪が成立するためには、運転者に「自分の身体がアルコールを保有しながら、車両を運転すること」の認識がなければなりません。

このため、呼気検査で単純にアルコール保有が認められたとしても、アルコール保有の認識がなければ、犯罪は成立しないのです。

 

 この「アルコール保有の認識」というのは、運転者の主観であり、単に「アルコール保有していないと思っていた(アルコールが残っていないと思っていた)」と言い訳をすれば、その言い訳が通ってしまう・・・などということはありません。

 

 客観的に見ても(外観上から見ても)、「アルコールが残っていないと思っていた」という主張が妥当で、信用できるといえなければならないのです。状況証拠が重要ということです。

 

 それでは、どのような要素をもって、アルコール保有の認識の有無は判断されるのでしょうか。

 

 これには、参考となる裁判例があります。

 東京高等裁判所平成24年5月14日判決は、飲酒検査で規定数値を超えるアルコールが検出された被告人が、身体にアルコールを保有していることを認識していなかったと争った事例です。

 東京高等裁判所は、アルコール保有の認識を認定するには足りないとして、第一審の有罪判決を破棄して無罪を言い渡しました。ここでは何が考慮されて、運転者は無罪となったのでしょうか。

 

 まず、飲酒してから運転するまでの時間の長さが挙げられます。この裁判例では15時間が経過していました。

 次に、飲酒検知前後の言動が挙げられます。この裁判例では、交通事故後に、運転者が自ら警察を呼ぶように求めており、飲酒運転を自覚しているとしたら不自然な行動をとっていました。

 また、飲酒検査時の運転者の外観(目が充血していなかった、身体機能や言語は正常だった)も考慮されています。

 さらに、飲酒量や、検知されたアルコール濃度、飲酒後の休憩状況(就寝したか)等も考慮されていました。

 

 これらの考慮要素をまとめると、運転者が自らの体内にアルコールが残っていないと思っていたという主張をしていることを前提として、

・飲酒してから運転するまでの時間の長さ

・飲酒検知前後の言動(自ら警察を呼んでいるか、飲酒を隠そうとしたか等)

・飲酒検知時の運転者の様子(目の充血の有無、身体機能や言語の状況、顔色や酒臭等)

・飲酒量

・検知されたアルコール濃度

・飲酒後の休憩状況(就寝したか)

・どのような運転をしていたか(危険な運転となっていたか等)

といった事情(状況証拠)を総合的に考慮し、アルコール保有の認識が認定されることになるといえるでしょう。

 

 飲酒運転は絶対にやってはいけないものですが、酒気帯び運転として犯罪となるかどうかは、単純に数値上だけで判断されるものではありません。「悪いことをしていると思いながら、それでも悪いことをした」といえなければ、故意が認められず、過失を罰する犯罪以外は成立しないのです。